2011年05月08日 20:21
「ウチのネジ(ナット)は鉄道、橋梁(きょうりょう)、高層タワーなど、
絶対にネジがゆるんではならない場所に使われています。
これまで世界中のメーカーから、多くの類似商品やコピー商品が出てきたが、
同じ品質の商品を作ることはできませんでした。
詳細は明かせないが、『絶対にまねができない』という自負がありますよ」
東日本大震災でビクともしなかった東京スカイツリーには“絶対にゆるまないネジ”が使われています。
世界唯一の技術を発明したハードロック工業社長、若林克彦さん(77)の経営哲学は「喜んでもらうこと」。
根っからの発明家だ。10歳のとき、楽に種まきができる「種まき機」を発明。
以来、万年筆のインクがいつも一定量になるように工夫した「定量付着インク瓶」、
厚焼き卵を手早く作れる「たまご焼き器」など生活に密着した発明を数多く世に送り出してきた。
たらいの水は、「相手の方」へ押してやると自然に「自分の方」へ返ってくる。
「お客さんに喜んでもらえるよう努力すればするほど、自分にも利益が生まれる。」
約40年前、その経営哲学を象徴するような出来事があった。
かつて経営していた会社が作っていた商品に、顧客からクレームが来たのだ。
その商品もやはり「絶対にゆるまない」ことをキャッチフレーズにしていた。
だが、技術的に完成されておらず、激しい振動を受けると、わずかにゆるむことがあった。
そこをただされてしまった。「絶対にゆるまないはずじゃなかったのですか」と。
共同経営者は、そのクレームをさほど重要視していなかったが、若林さんは放置できなかった。
「ならば本当に“絶対にゆるまないネジ”を作ってみせようじゃないか」
そして、自ら創立した月商1億円以上の会社を無償で共同経営者に譲り、
わずかなスタッフとともに現在のハードロック工業を新たに立ち上げた。残ったのはその商品の特許料だけ。
そして約40年後、その会社と競い、東京スカイツリーでの採用を勝ち取ることになる。
昨今の「金さえあれば何でもできる…」といったような風潮ががまんならないという。
日本の技術を追っかけてきたアジア諸国の中にも、こうした“無法なやり口”で、
強引に技術を盗もうとする国が少なからずある。
「日本の企業と合弁でプロジェクトを立ち上げておきながら、メドが立つと、『ハイさよなら』と追い出してしまう。
でも実際は、日本が何十年もかけて開発した技術をわずか3、4年でまねしようったってできないんですよ」。
その国は若林さんのネジの模造品も多数作っているが、結局、品質面では及ばない。
同時に、日本の“脇の甘さ”も気になる。「先端技術を持った技術者が外国に引き抜かれ放題です。
このままじゃ日本はジリ貧ですよ。どうしたら付加価値が高くまねができない商品を生み出せるか。
行政も一緒になって知恵を出し、体制をつくらねばなりません」
イギリスやドイツ、台湾の高速鉄道、日本の各新幹線、瀬戸大橋…。
“絶対にゆるまないネジ”は、今や世界中で引っ張りだこ。
従業員わずか50人弱の大阪の中小企業が、誰にもまねのできない技術を持っているのである。
しかも百パーセント国内生産。まさに、「ものづくり」で長く世界をリードしてきた日本企業のお手本ではないか。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110508-00000502-san-sociより抜粋